Landscape Architecture Publisher - FUUKEI PUBLISHING
写真は人工地盤の上につくられた緑のスペースである。利用者の多くは普通に土の上だと思うであろう。写真からも分かるように、緑のエリアの向こうは夏の太陽が煌々と照りつける灼熱の世界が広がる。特に用事がなくても、涼を求めてこのエリアでひと息つく人は多いと想像できる。かく言う私もそのひとりだ。めちゃくちゃ涼しいというわけでもないが、ひと息入れるには最高の環境である。汗を拭き、ボトルに入れてきた冷えた麦茶を飲みリセットする。
この空間がランドスケープアーキテクトが何日もかけて設計したものであることを忘れてはいけない。回遊路の配置とその素材、ベンチはどこに置くべきか、そのサイズは?、素材は?、樹木と草花の選定と植栽のデザインなど。さらには、誰がどういう使い方をするだろうか、昼になればランチを食べる人がいるだろう、近くのタワーマンションに住む若い親子がベビーカーで来ることもあるだろう、夜になれば駅に向かう途中に立ち寄る人もいるだろうなどなど、様々な使われ方を妄想しながら設計しているに違いない。その姿を想像すると、時には難しい顔で、時にはニヤッとしながら図面に向かっている姿が見えてくる。知らない人がその様子を見れば「変な人」と思われてしまうに違いない。基本的に私は「変な人」が好きである。なぜか興味をそそられる。
ここを利用する一般の人たちは誰が設計したのかを知る術はない、それ以前に設計している人がいることすら想像しないであろう。こうしたランドスケープデザインの匿名性は私が惹かれる要因のひとつであるが、ランドスケープアーキテクトは社会を良い方向へ導くことができるほどの力を持つ、実はすごい人たちばかりであることを知って欲しい。